TALK02
将来、後輩に担当を譲っても
自分の名を思い出して
もらえるような存在に。
石田 雅揮
敦賀支店
佐々木 善匡
第一営業部
福井大学グループ
「趣味つながり」で勤務地の枠を超えた交流が始まった。
― 営業職という仕事に興味を持ったきっかけは何でした?
石田:理系の大学だったんですけど、細かいことをするのが得意じゃなかったんですよ(笑)。外で人と話すのが好きだったので「製造か営業かというと、自分は営業向きだよなあ」という流れで。
― 入社して、営業職との相性はどうでした?
石田:正直、会社に入ってすぐの頃は迷っていることもありましたけど、入社十数年経って合っていたと思いますね。会社を辞めようとまでは思わなかったですし。
― 佐々木さんは県外の大学の出身ですよね。福井での就活情報はどのように入手されたんですか?
佐々木:大手や地元の就活サイトにエントリーして、合同説明会にも参加していろんな会社のブースを回りました。石田さんと一緒で工学部卒なんですけど、僕もメーカーの内勤の研究職って肌に合わないなあって思って(笑)。
― 研究室にいたのに(笑)。
佐々木:それで営業職にしようかなと思って。縁があって医療系の業界に来ました。僕も人と話をするのはもともと好きだったので。
― MITASというと、年齢の近い先輩社員とともに過ごすブラザー制度(新人研修制度)があります。
石田:僕が新人の頃はなくて、佐々木くんの時くらいから?
佐々木:そうですね。でも、僕が入った頃のブラザーはけっこう上の世代でした。今みたいに近い年齢ではなくて。
― ブラザーではなかった二人の接点を聞かせてください。どういったきっかけで仲良くなったんですか?
石田:趣味だよね。一緒にスノーボードに何回か行ったんですよ。多分そこかなと思うんだけど。
佐々木:共通の趣味がきっかけですね。でも、僕が入社してすぐ仲良くなったというわけじゃなくて。
石田:そんなに最初の頃からじゃなかったよね。
― ふだんの仕事の拠点も離れていますよね。
石田:以前は敦賀支店勤務でも、いったん本社に出社して敦賀に向かうという規定だったんです。最近になって、敦賀に住んでそのまま支店に出社する社員がいるようにもなったんですが。
― そうすると、趣味の話を何かの機会でしていたと。
佐々木:石田さん、スノーボードだけが取り柄で(笑)。僕は初心者だったのでいろいろ教えてもらって、何度となく一緒に滑りに行っているうちに仲良くなって。
石田:スノーボードぐらいしか一緒に行かないですね。仲が悪いんだよ、実は(笑)。
佐々木:結婚して子どもが生まれてから、なかなか滑りに行けなくなったというのもあって。最近はもっぱら子どもと一緒に過ごすことが多くなりました。
石田:そういえばこの間、佐々木くんと二人でアメリカのラスベガスに行ってきたんですよ。年度初めに「キックオフミーティング」というのがあって、優秀賞を受賞すると海外旅行に行けるんです。
― 優秀賞を受賞する条件は?
石田:社長の独断と偏見で……というのは冗談ですけど(笑)、売上高だけじゃなくて、1年間の社内での立ち振舞いだったりとかいろんな要素を総合的に評価して。
石田:売上高だけだと担当部署によってバラツキが出るので、トータルで判定した「社長賞」的な評価ですね。トップから高評価をもらえたというのは一番のごほうびですけど、海外旅行に行けるのはもっとごほうびですね(笑)。優秀賞は毎年2人なんですけど、たまたま佐々木くんと一緒で。
佐々木:自分の仕事が評価されてうれしかったですし、仲のいい人と行けたのもよかったです。
新規開業支援は営業職の醍醐味の一つ。
― 社長賞の礎ともいえる、ふだんの仕事の流れを聞かせてください。
石田:敦賀支店の支店長として、各営業担当者が受け持っているお客さま先に定期的にフォローに回るという仕事が多いですね。支店長になる前から担当していたような開業医などはそのまま担当していますが。先生に会って、仕事の話3分の1、仕事以外の話3分の2みたいな感じで(笑)。
― 佐々木さんはいかがですか?
佐々木:大学病院の担当なので、基本的には会社と大学病院との往復です。それと、勤務医から独立開業する先生の案件を何度か担当したこともあります。大きくはこの二つですね。
― 開業医のフォローもしているんですね。
佐々木:大学の先生から「開業したいんだけど」という相談をいただくことがあって、そこから開業まで一連の流れを、場所選定のアドバイスなども含めて。
― そういう場面で相談を持ちかけられるというのは、営業職冥利に尽きますよね。
佐々木:うれしいですよね。頼っていただけるというのは。石田さんもそういうのをやっているんですけど。
石田:変なところで持ち上げるね(笑)。先生が開業するときの相談相手は大きく3通りあって、ウチのような医療機器ディーラー、MR(=医薬品営業)、それと銀行。先生からファーストチョイスで声をかけてもらえると契約につながる確率も上がる。大型機器を取り扱ったり開業支援をしたりできるというのは営業の醍醐味ですよね。
― 二人の商談のスタイルにも興味があります。石田さんから「雑談」というような話もありました。
石田:相手によって使い分けますね。真面目に一から十まで理論立てるというトークがあまり得意じゃないので、気心知れたような先生だとざっくばらんにいったり。ただ、口がどれだけうまくても芯は真面目でないと表で取り繕っていてもすぐにバレちゃうんですよね。先生から鋭い質問が飛んできてすぐ気付かれてしまう。
佐々木:大学病院の担当になって10年ほどになるので、先生と仲良くなれてフランクに話すことも多くなってきました。ただ、押し売りというか、先生がイヤだと言うような物は売らないように気を付けています。望んだ物だけを提供しようというスタイルで。どちらかと言うと引くタイプなんですよ。それがいいか悪いかは分からないんですけど。
― でも、月間とか年間の販売目標はあるでしょう?
石田:ありますね。
佐々木:販売目標に向かって仕事をするので、イヤだと言われたら次の矢を撃つというような仕事の繰り返しですね。ただ闇雲に矢を撃ってもダメで。高価な機械を扱うだけの勉強はしないといけないですし、相手は自分よりもはるかに知識を持っている方なので、中途半端な知識で行くと……
石田:すぐツッコミが入るよね。「その説明おかしいよね」ってすぐ言われて。
― そういうやりとりの中で、これまでに一番叱られたエピソードを教えてください。
石田:叱られたことを振り返ったらキリがない……
― 入社からの十数年を振り返って、強烈に記憶に残っているような出来事はありますか?
石田:入社1年目か2年目で「もう来ないで」って言われたことはあります。病院の看護師さんからでした。患者さんが来院する前に届ける物があったんですけど、間に合いそうにないなと思って「ちょっと遅れてもいいですか」と言ったと思うんです。それがNGで。
言い方も悪かったんでしょうね。「それはあなたの会社の責任でしょう。ウチの病院に押し付けないでね。あなたは来なくてもいいです」と。何回か謝りに行きましたけどあいさつしてくれなくなって。
― 信頼回復は難しかったんですか?
石田:その看護師さん、その後にウチが毎日のように訪問している部署の責任者として異動になって。顔を合わせないわけにはいかなくなったんです(笑)。そこから少しずつしゃべるようになって、ようやく普通に話してもらえるようになりました。7年くらいは通路であいさつしても応じてもらえなかったですね……
― それだけシビアな世界に生きているということですものね。佐々木さんは?
佐々木:僕はオペ(手術)がらみでミスを……オペに使う物を依頼されていたんですが、連絡の行き違いがあったんです。オペが始まってから「物がない! どういうことだ!」という電話がかかってきて、オペ自体はなんとか終わったんですが、謝りに行ってもまったく口をきいてもらえないことが1年くらい続きました。
― それはいつ頃の話ですか?
佐々木:5~6年ぐらい前ですね。僕の場合はミスをした1年くらい後に違う商談を持ち込んで回復したんですが、仕事に対する意識が変わりましたね。人の命に関わる仕事をしているんだと。
― 仕事が慣れてきた頃の話ですよね。
佐々木:そうですね。慢心が招いたというか。
― 今の話は石田さんにはしたんですか?
石田:初めて聞きました(笑)。自己弁護というわけではないんですけど、やっぱりこういう経験がないと仕事に対する意識って変わらないんですよ。自分たちがどれだけ大事な仕事に関わっているかということに気付けない。人の命がどうにかなってしまったら、忘れられない話どころのことではなくなってしまいますから。
家族の理解が仕事に取り組む励みになる。
― 人の命に関わる仕事ということで、休日にも病院から電話がかかってきたりするんでしょう?
佐々木:かかってきますね。年に1回か2回くらいは。休日に呼び出しがかかって病院に走ります。
石田:僕の妻は医療業界と関係ない仕事に就いてますけど理解はしてもらってます。結婚前に付き合っていた頃、休日に一緒に映画見ている時に呼び出しがあって敦賀に走ったこともありますから。家族を連れて敦賀に行ったこともありますよ。呼び出しがかかって「今から敦賀に遊びに行くぞ」みたいな感じで。
佐々木:ウチは妻が看護師なので、呼び出しがかかってもすぐ「行ってきて」と送り出してくれます。休日はもっぱら子守りですけど、仕事に対して理解してもらっているのはありがたいです。
― 家族の理解があるというのは仕事をする上で励みになりますよね。
佐々木:自己満足かもしれないけど、高価な医療機器を取り扱う機会を得ることができるというのは他の業界ではなかなかないじゃないですか。それだけ高い物を扱えるということに僕はすごく魅力を感じてます。高価といってもお金自体は触ったことないですけど(笑)。
石田:その分プレッシャーもあるけどね。先生から質問されたことに答えられなかったら「それじゃあ必要ないよね」という話になるので。
佐々木:ですよね。プレッシャーはありますね。
― それでも仕事を続けられる原動力は何でしょう?
佐々木:医療はどんどん進化しているので「ここまで来たら終わり」というのがないんですよ。最近ですと再生医療の研究もすごく進んでいますし。常に勉強しないといけないけど、勉強そのものを毎日楽しんでますね。
(会社の)○○さん元気?」と聞かれることがあって。かなり以前の上司の名前だったりするんですけど、そのことを本人に伝えるとすごくうれしそうな顔をするんですよ。将来、自分が去った後、お客さまからそういうふうに思い出してもらえるような存在になりたいですね。